三浦綾子『銃口』

この話は、戦前から戦後までを生きた北海道の小学校教師の話です。

北森竜太は、タコ部屋(奴隷部屋)から逃亡した金俊明という名の朝鮮人とともに育ちます。父が彼を匿ったのです。その後、教師を志し、夢をかなえます。幼馴染みでクリスチャンの芳子も教師となり、竜太と婚約しますが、式の直前、「北海道つづり方事件」に巻き込まれます。治安維持法の時代で、思想統制が強まり、共産主義者が次々に逮捕された当時、「つづり方」(書写)教育に重点を置き、既存の教育に疑問を持つ教師が開いた勉強会に参加したことから、竜太は共産主義を疑われて、投獄されることになります。

夢の職業だった教師を退職させられ、世間には「前科者」「共産主義者」のレッテルを貼られ、肩身の狭い思いをしていた竜太は、新しいスタートをしたくて、芳子と満洲行きを願います。しかし、式を挙げる直前に徴兵され、奇しくも行先は満州。満洲では心の正しい人々に励まされた一方、蛮行の「武勇伝」を語る日本兵と諍いを起こしたこともありました。

終戦。敗戦国の兵士の帰国は非常に危険で、もうこれまでかと思われたとき、幼いときに父がかくまった、金俊明に偶然にも満州で再会し、保護を受けて、奇跡的に帰国できました。

帰国後、竜太は、戦争中に、人を守るより自分の安全を守った自分に心を痛め、子どもにさえ必要なときに食べ物を分け与えなかった自分を思い起こして罪を悟り、芳子の信じていたキリストの道を求めるようになります。 心に留まったのは、竜太がある程度正しい歩みをしてきたのに、それでも罪を悟って求道したことです。竜太よりも悪行を働く者は、たくさんいました。金俊明をタコ部屋に入れた人や、差別した人。正当な理由なく投獄する警察、軍部、国。蛮行の武勇伝を語る日本兵。竜太は教師であり、世間から言えば非常に清い生き方をし、理由なく迫害を受けることもありました。それでも、他人より自分を優先してしまうことで罪を悟りました。ヨブみたいだと思いました。自分に明らかに正しいところがあっても、罪を認めてキリストに近づく、謙遜な歩みに、心を探られた作品でした。(2026年5月24日週報)

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