(14年前の)北京オリンピックで、中国選手は、自国民の圧倒的な応援を受け、最多の金メダルを獲得しました。しかし、中国選手は大変だったようです。メダルが取れればいいものの、とれなければ13億のバッシングが待っているのですから。110mハードルの中国の英雄・劉翔などは足の故障でレースを棄権し、一転して国民の敵になってしまいました。
テニス女子でメダルが期待されていた李娜もそうです。彼女の準決勝の試合で、「中国加油(チャーヨー)」(頑張れ)の大声援が続き、審判が静かにするよう何度も注意しましたが、止みませんでした。李娜は結局、その試合に敗れ、最後に観客席に向かって「Shut up(黙れ)」と叫んだというのです。それがネット掲示板などで、激しいバッシングを受けることになりました(「やじを飛ばす中国人の男に向かって言ったのであって、応援する観客に言ったのではない」という弁護もありました)。
李娜は記者会見で、「観客がうるさくて集中できなかったのではないか。どうしたら観戦マナーを改善できると思うか」と問われ、「私は自分のことは変えられるけど、他人のことは変えられない」とだけ答えたそうです。
一方、日本人選手はほとんど競技で完全アウェイの戦いでした。反日感情をもつ中国人が、中国人が出場しなくても、日本選手の試合に大勢押しかけ、日本にはブーイング、対抗国には大声援を送ったのです。それが中国戦ともなると、もう審判にも影響するほどでした。そんな中で力を出し切るには、相当の精神力、平常心が必要です。
その精神力を発揮したのが、バドミントン女子ダブルスに出場した末綱・前田組でした。準々決勝で、世界ランキング1位・アテネ五輪金の中国ペアを破りました。彼女らはオグシオ人気に隠れて、注目されるどころか、その存在さえよく知られていませんでした。しかし、注目されないことを益として、大金星を上げたのです。「人に知られないようでも、よく知られ、死にそうでも、見よ、生きており」(Ⅱコリ6:9)という聖句を思い出させる二人でした。
人には知られず、注目も期待も応援もされないほうがかえって楽で、力が発揮しやすい時もあります。ただ、主にだけ知られていればいいのです。(2008年8月24日)

