神の存在証明4

神の非存在の証明はできない

一方、神が存在しないことを証明する場合も、同じことが言えます。神が存在しないことを論理的に証明しても、論理的であれば神が存在しなくなるわけではありません。また、神を体験したことがないから、神はいないと断定できるわけでもありません。

無神論者の中には、「科学は神が存在しない証拠を百以上示すことができる」と主張する人たちがいます(Eric C.Barrett & David Fisher,”Scientists Who Believe”)。でも、その一方で、神の存在を認める科学者も少なからずいます(三田一郎『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』BLUE BACKSなど)。神が存在しないという科学的証拠は、何百提出しても、科学者を説得するに足るほどではないのです。科学者でも信じない人は信じないし、信じる人は信じます。

① 科学は、神の非存在を証明しない

アインシュタインと並び、「世界で最も優れた物理学者」と称されたホーキングは、神の存在を信じない側の一人でしょう。彼は「あらゆることは神を持ち出さずに、自然法則によって説明できると考えるほうがいい」「宇宙は自然法則に従い、何もない所から自発的に生まれた」と言っています(『ビッグ・クエスチョン』NHK出版p41、44)。

しかし、「宇宙の始まりや人間の起源など、すべては神が存在しなくても説明できる」というだけのことであって、神の非存在そのものを証明したというわけではありません。「神が存在すれば、宇宙の始まりが説明できなくなる」といった「前向きな証明」ではないのです。実際、神が存在しても、宇宙や人間の起源は充分説明できます。むしろ神が存在しないと説明のつかないことのほうが多いでしょう。

しかも、科学といえども、私たちの生活体験のすべての領域を覆い尽くしている学問ではありません。科学は人間生活の一つの領域を語るものであって、たとえば道徳的領域や宗教的領域における体験を云々する学問ではないのです。

ただ、一九、二〇世紀は科学の威力と功績が余りにも大きかったので、人々は科学的知識や方法が全領域を覆うと思い込んでしまったのです。今日でも、科学的に実証されれば、それが事実のすべてであり、本質のすべてであると信じる科学主義の考え方は根強いですが、科学にそのような絶対性はありません。むしろ科学主義は、学問の世界では既に崩れさっています。科学もまた、有限な人間の体験と知性と理性の枠組みの制限を受けた学問だからです。人間を過信しない真の科学者であるなら、現代の科学の真理が永遠に不変であるとは主張しないと思います。

次回は、②存在しない神とはどんな神か、です。

おすすめ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です